コインランドリーズはバイトから学ぶ。
「うわ、今日バイトだ!だり~」
と言うやつを胸のどこかでバカにしていた。
そう言っている奴の本末転倒感というか必死感というか、社会参加感というか、なにやら不明瞭なもやあんとした感じを、心底カッコワリーと感じていた。
そんな俺がアルバイトを始めた。
ヤツらもすなるバイトというものを私もやってみんとすなりってな心境で、ノシノシと面接に向かい、エプロンなるものを着け、いざ接客。
そこで思考回路が停止した。
言葉が出てこない。
「いらっしゃいませ、何名様ですか」の王道フレーズをなんとか喉から絞り出す。
客の目が見れない、脂汗、脂汗、脂汗。
ゼンマイ式のロボットのような奇々怪界な動きで客をテーブルまで誘導する。
テーブル横でニヤニヤしていると客は俺を不安げな顔で見上げ、
「メニューは?」などという。
そうだ、メニューだ。今こそメニューを出すときだ。
俺はまたロボット動きでメニューを取りに戻り、「これです」と蚊のような声でつぶやきながらテーブルにそれを投げ捨てる。そしてまた、テーブル横でニヤニヤする作業に戻る。
客はまだ何か言いたげだ、なぜだ、メニューは持ってきたじゃないか。
「水ください。」
なんて注文の多いお客さまだ!
俺は「ハァイ」と素っ頓狂な裏声で答え、キッチンに戻る。
そこで初めて一息ついた。
なんだこれは。接客業とはこうも恐ろしいものだったのか。
俺は予想がつかない事が苦手だ。
友人や家族との会話とコレとは話が違う。自分のペースが乱される。
2人分の水を震える手で注ぎながら俺は黒目をギョロギョロさせていた。
その日俺がアクロバティックなロボットウェイターとして、お客様連中を恐怖のずんどこに叩き落としたことは言うまでもない。
8月13日、人はこの日をアポカリプス・デイと呼ぶ。
それから1ヶ月と少し。
俺はゼンマイ式ロボットから、妖怪人間ぐらいには進化した。
足りないものを挙げればきりが無い。
自信、慣れ、清潔感、早寝早起き、思いやり、スマイル、声量、清潔感、人間的な動き、エトセトラ。
「もっと自信持てお前は」と店長が言う。
粋で寛大なこの人のおかげで、俺はなんとか今もそこに置いてもらう事ができている。
俺がバカにしていた「バイトだり~族」は、俺が『もう人間辞めちゃおうかしら・・・』と思う程に苦しんでいるソレを、すでに「だり~」で表現するレベルまで到達している。
ああ!俺も「だり~」って言いたい!「だり~」って言いながら髪先を弄りたい!!!
と、最近は思っている。
「だり~」をバカにしていたのは、それが自分の苦手なことだったからだ。
カッコつけマンの俺にとって、それは大きな壁だったのだ。
憧れと嫉妬がそこにあったのだ。
思わぬ発見だった。
先ほど、ハンバーガー屋で身に覚えのある光景を見た。
挙動不審にレジ裏をさまよう店員がいたのだ。
あ、ゼンマイ式のやつだ。親近感がむくむくと湧いてきた。
がんばろうぜ、と思いながらアイスコーヒーを注文する。
「コチラガアイスコーヒーニナリマァス」と彼が言う。
だよな、わかる、わかるぜ、と思いながら俺も「ハァイ」と返事をする。
ごはんおいしいよ
文:口淫亭ガンダム
コインランドリーズには火がない
コインランドリーズには火がない
僕たちには火がない
そもそも無くなったから補充しようという考え方がない
かといって頭がない、訳ではない
無常観に趣をおいている
等と格好つけたいわけでも‥‥あるかもしれない
「一度栄えしものでも♪必ずや劣れ行く♪」
と林檎ちゃんがうたったように
「花は散るから惜しまれて♪水は流れて美しい♪」
と新選組リアンがうたったように、そして本当に散っていったように
コインランドリーズがタバコをくわえる。
例えば
どちらかが火をもっていて
どちらかが火をもっていない
その時は
どちらかが「僕には火がない」という
どちらかが「君に非はない」という
wrriten by 口淫亭肥後丸
コインランドリーズのルール
1. コインランドリーズのことについて話す
2. コインランドリーズのことについて絶対話す
3. だれかが、もうええわと言う、
もしくはいい加減にしろといったら、漫才は終わり
4. コントはまごころと厭世観
5. 1ヶ月に1度は必ず公演
6. スーツを着る
7. コメディを、死ぬまで
8. おいしいごはんを食べろ
コインランドリーズは2人いる。
コインランドリーズは瞬間を爆発させる。
コインランドリーズはいつも君と共にある。
コインランドリーズは日本のエンターテインメントに新風を巻き起こす。